ナレッジ

ナレッジ リスク・罰則関連

電子帳簿保存法に対応しない場合は?考えられるリスクや罰則を解説


電子帳簿保存法が2022年4月に改正され、2024年1月1日から、電子取引に関してのデータ保存が義務化されました。これによって対応を迫られている事業者も少なくないでしょう。電子帳簿保存法への対応を面倒だと感じている人もいるかもしれませんが、対応しないとさまざまな不利益を被ることになります。本記事では、電子帳簿保存法の概要と対応しない場合のデメリットなどについて解説していきます。


電子帳簿保存法とは



電子帳簿保存法は、従来紙での保存が義務づけられていた書類に対して、電子データの保存を可能としている法律で、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

電子帳簿保存法は2022年1月1日に改正されました。この改正においては、帳簿書類をデータ保存する方法について抜本的な見直しがなされています。「電子取引」に関するデータ保存においても一定の要件を定め、事業者の義務とされました。電子取引のデータ保存については、2024年1月1日から完全に義務化され、紙での保管は廃止されています。


対象となる事業者

電子帳簿保存法の対象事業者は、国税関係帳簿書類を保存する必要がある者や電子取引を行っている者です。原則として事業規模を問わず、すべての企業や個人事業主が対象となりえます。


対象となる書類の種類

対象となる書類は国税関係帳簿、国税関係書類、電子取引に関する書類です。帳簿や書類の例は下記の通りです。


<帳簿・書類の例>

  • ・国税関係帳簿:総勘定元帳、仕訳帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳などの帳簿
  • ・国税関係書類:損益計算書や貸借対照表などの決算関係書類、請求書や見積書などの取引書類
  • ・電子取引に関する書類:電子メールやクラウドサービスなどで授受される請求書や見積書、注文書、納品書、領収書ほか

電子帳簿保存法 3つの区分と保存要件

電子帳簿保存法では、データ保存方法について大きく3つの区分があります。


  • ・電子帳簿等の保存要件:電子的に作成した帳簿・書類のデータを保存する場合の要件
  • ・スキャナ保存の保存要件:紙の書類をスキャナでデータ化し保存する場合の要件
  • ・電子取引の保存要件:電子取引で授受したデータを保存する場合の要件

電子帳簿保存法上、電子帳簿とスキャナ保存は希望者のみ、電子取引については対応必須となっています。保存要件を満たしたデータが保存されている場合は、紙の書類は廃棄が可能です。各々の保存要件を、データに対する措置と検索要件に分けて簡単にご紹介します。

※それぞれの要件については条件があります。詳しい条件は下記国税庁のサイトをご参照ください。

参考:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

電子帳簿等の保存要件【任意】

・データに対する措置

電子帳簿を扱う情報システムやソフトウェアを使って、記録事項の訂正や削除、および業務処理時間を経過した後の入力を行った事実や内容を確認できることが要件のひとつです。加えて、電子化した帳簿と他業務の帳簿との間で、関連性を相互に確認できる機能や仕組みも求められます。


・検索要件

情報システムに関連する仕様書や、ディスプレイやプリンタなど情報システムを利用するのに必要な周辺機器の仕様書や説明書を備え付け、必要となった際には速やかに確認が行えることが求められます。またデータを速やかに確認するため、データを取引年月日・取引金額・取引先に応じて検索できるようにしなければなりません。日付または金額の範囲指定や、2つ以上の項目で組み合わせて検索できることも要件のひとつです。ただし範囲検索や組み合わせ検索の機能は、税務調査が入ったときに調査担当者からの要請による記録のダウンロードに対応できるのであれば、不要となります。

なお改正により、以前求められていた税務署長の事前承認は、事業者の負担軽減のために不要となりました。


スキャナ保存の保存要件【任意】

・データに対する措置

スキャナ保存では、データが改ざんされていないことを証明するためにタイムスタンプを付与する必要があります。その付与期間は、最長で約2か月+おおむね7営業日以内です。データの訂正や削除を行った際にその事実・内容が確認できるクラウド等を使っている場合には、タイムスタンプは不要となります。


・検索要件

データを検索する要件は、電子帳簿等の保存要件と同様です。


電子取引の保存要件【必須】

・データに対する措置

電子取引においても、取引時のタイムスタンプの付与と取引後の速やかなタイムスタンプの付与が必要です。また訂正・削除時の確認が可能なシステムを使うこと、あるいは訂正・削除ができないシステムを使うことなどが求められます。


・検索要件

データを速やかに確認することを目的に、電子取引のシステムや閲覧のためのディスプレイなどにシステム仕様書や取り扱い説明書などを備え付けることが求められることなど、検索要件は電子帳簿と同等です。ただし一定の条件を満たした小規模な事業者は、税務職員による質問があった際にデータのダウンロードが可能な場合には、全部の検索要件が不要となります。


電子帳簿保存法に対応しないデメリット



先述の通り、2024年1月1日からは電子取引における電子データの保存は義務化されています。そのため、電子帳簿保存法に対応しないと、さまざまな不利益を被ることになるでしょう。


経理業務が非効率になる

電子帳簿保存法は、経理のデジタル化や企業の生産性向上を図るための法律です。逆にいえば、対応しない場合には経理業務が非効率になる可能性があります。電子帳簿保存法に対応しないということは、経理関係の書類や帳簿をすべて紙で保存しなければならなくなる、ということです。紙データの場合は手作業で書類を整理することとなり、電子データに比べて経理処理にコストや手間がかかってしまいます。


紙の書類・帳簿は保存場所が必要・探す手間がかかる

紙の書類・帳簿は保存場所が必要です。経理関係の書類・帳簿は保管年数が定められているため、書類・帳簿の数は年々増えていき、広いスペースが必要になっていきます。書類が多ければ多いほど、必要な書類を探す際にも時間と手間がかかってしまうでしょう。


紙の書類・帳簿は紛失・劣化リスクがある

また、紙の書類・帳簿は、劣化や紛失のリスクがあります。劣化して読めなくなってしまえば、証跡としての役割を果たすことはできません。書類・帳簿の劣化・紛失を防ごうとすると管理が厳重になり、管理コストが増加する可能性もあります。


電子帳簿保存法に対応しないと罰則の可能性も



さらに電子帳簿保存法に対応しなかった場合には、追徴課税や会社法による罰則が課される可能性があります。


重加算税の課税措置

悪質な不正があった場合には、重加算税の課税措置がなされます。重加算税とは、申告が適切でない場合に課される「加算税」の一種で、申告に仮装・隠ぺいがあった場合に課されるものです。スキャナ保存や電子取引に関して、仮装・隠ぺいがあった場合には、10%の重加算税が課されます。


青色申告の承認の取り消し

災害などの事情がなく、電子取引のデータが保存要件に従って保存されていない場合には、青色申告の承認が取り消しとなる可能性もあります。青色申告の承認が取り消されれば、確定申告時の控除など青色申告によるメリットが受けられなくなるため、事業の運営に大きな痛手となるでしょう。


電子帳簿保存法に対応するためにやるべきこととは?


経理や電子取引で電子帳簿保存法に対応するためには、以下のような対応が必要です。


社員教育の実施・取引先への周知

電子帳簿保存法のシステム上の対応と並行して、関係者に対応方法について周知し、教育を実施しましょう。紙での保存と電子データでの保存の違いや対応の重要性などを従業員全員に理解してもらう必要があります。また取引先に対しても、電子帳簿保存法の対応を行っていることを伝え、電子データの原本となる紙の書類は不要と伝えておきましょう。


業務フローの整理

不正やミスを未然に防げるよう、業務フローの見直しも求められます。電子取引の電子データを保存するためには、まず自社でどのような電子取引があるのかを把握することが必要です。特に紙に印刷する業務フローは、印刷不要となるように変更します。取引先ともデータ授受の方法を統一できるよう、請求書発行のフローも変更できるとベターです。


電子データの保存場所を明確にする

もう1点重要なのが、どの電子データをクラウドや自社サーバーなどのどこに保存するのかを明確にしておくことです。併せて、データのバックアップの方法も考えておきましょう。また電子データを改ざんされないように、電子データ保存場所にアクセスできる人を限定し、適切な権限を設定することも求められます。


電子帳簿保存法に対応した専用システムを導入する

電子帳簿保存法に対応したシステムを導入するのも一つの手段です。電子帳簿保存法に対応するにあたっては、さまざまな場面でタイムスタンプの付与が必要となります。そもそもタイムスタンプとは、付与された時間にそのデータが存在したこと、それ以降にそのデータが変更されていないことを証明する技術です。これによって、タイムスタンプが付与されたデータが正当な原本であること、改ざんされていないことを証明できるのです。

DocuTrackerは、電子帳簿保存法に対応したタイムスタンプを付与することができます。クラウドストレージサービスに保存されたファイルに、自動的にタイムスタンプが付与される仕組みとなっており、複雑な設定も必要ありません。
また、DocuTrackerは、ブロックチェーンの技術を活用し、信頼性の高いタイムスタンプの付与を行っています。仮に何者かによってデータが改ざんされた場合、前後のブロックに不整合が生じることから、すぐに気づくことができるため安心です。


DocuTrackerなら、電子書類・データが改ざんされていないことを証明し、保管履歴の証明が可能。詳しくはこちら ≫

※ブロックチェーン……暗号技術を用いて分散的に処理・記録する技術。DocuTrackerで用いているブロックチェーンは、テックビューロ株式会社が開発・販売しているプライベートブロックチェーン「mijin」です。

まとめ


電子帳簿保存法の概要と導入しない場合のデメリットや、導入にあたって行うべきことを紹介しました。会社の業務を円滑に進めるためには、電子帳簿保存法への対応は必須です。電子帳簿保存法に対応できていない場合は、追徴課税のおそれがあるだけでなく、コンプライアンスを軽視している企業とみなされ、信頼を失ってしまうおそれもあります。電子帳簿保存法の内容を正しく理解したうえで、適切に対応しましょう。