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電子帳簿保存法をわかりやすく解説!2024年の改正点もご紹介
電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿や書類について、電子データで保存する際の要件などが定められた法律です。2022年の改正により、2024年からは電子取引における電子データ保存が義務化されました。電子帳簿保存法は企業だけでなく、フリーランス・個人事業主にも大きく関係してきます。しかし、具体的にどのような対応が求められているのかがわからず、対応に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、電子帳簿保存法の基礎から解説するとともに、2024年の改正点についてもご紹介していきます。
電子帳簿保存法の概要をわかりやすく
電子帳簿保存法は、従来紙での保存が義務付けられていた国税関係帳簿・書類を電子データで保存することを認め、その要件を定めた法律です。正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。まずは、電子帳簿保存法の基本的なポイントから確認していきましょう。
電子帳簿保存法 対象の事業者
電子帳簿保存法の対象事業者は、国税関係帳簿書類を保存する必要がある者や電子取引を行っている者です。一部例外はあるものの、事業規模を問わずすべての企業や個人事業主が対象となりえます。
電子取引は対応義務あり
2024年1月1日より、電子取引に関するデータについては電子帳簿保存法対応が義務化されました。必ず対応しなければならず、対応に不備がある場合にはペナルティが課せられる可能性があるため注意が必要です。
3つの区分でわかる!電子帳簿保存法の仕組み
電子帳簿保存法では、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つの保存方法について、それぞれ要件が定めています。
1. 【任意】電子帳簿等保存
電子帳簿等保存は、企業がPC等で作成した会計帳簿や決算書類を保存するケースです。他の個人や組織とやり取りを行っておらず、自社内で完結している帳簿・書類が対象となります。基本的にはプリントアウトせずにデータのまま保存できますが、この区分は法対応が義務ではなく、ルールに則ればプリントアウトして保管することも可能です。
2. 【任意】スキャナ保存
スキャナ保存は、紙の領収書や請求書などをスキャナでデジタル化し、データを保存するケースです。スマホやスキャナで読み取れば、領収書や請求書などの紙の原本は破棄できます。スキャナ保存は紙での取引が対象であるため、法対応は任意となります。
3. 【義務】電子取引データ保存
メールやオンライン取引などで請求書や領収書などの電子データをやり取りするケースです。電子データをやりとりした注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などは、保存要件に従ってデータを保存しなければなりません。
2024年1月1日より対応が義務となっていますが、新たな猶予措置が整備されています。下記の条件を満たす場合には、改ざん防止や検索機能等の対応は不要で、単なるデータ保存が可能になります。
・所轄税務署長が相当の理由があると認める場合
・税務調査の際に電子取引データの「ダウンロードの求め」及び電子取引データの書面での提示・提出に応じられる場合
保存要件クリアに関わる「真実性」と「可視性」の確保
電子帳簿保存法のデータ保存要件では、「真実性の確保」と「可視性の確保」が求められています。
「真実性の確保」とは、データに偽造や虚偽がないという「真実性」を証明することです。具体的な要件の例としては、タイムスタンプの付与や、訂正や削除ができないシステムを利用していること、社内でルールを定めていることなどが挙げられます。真実性の確保は、スキャナ保存と電子取引で要件に含まれています。
「可視性の確保」とは、保存したデータを見やすく、いつでも閲覧できるようにすることです。要件の例としては、指定されたスペックのディスプレイやプリンターを用意すること、システムや周辺機器に説明書等を備え付けること、データを日付・金額・取引先などの条件で検索できるようにすることです。可視性の確保は電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引それぞれで要件が定められています。
電子帳簿保存法に対応するための具体的なステップ
続いて、電子帳簿保存法に対応するためのステップを3つにわけてご紹介します。
ステップ1:対象書類や取引の整理
まずは社内でどのような書類や取引があるのかをリストアップします。以下の項目をそれぞれ整理していきましょう。
- ・取引書類の種類…請求書、領収書など
- ・取引の方法:メール、EDI、クラウドサービス、FAXなど
- ・保存方法:社内のサーバー、クラウドサーバーなど
- ・件数:現在の総数と、月間/年間あたりの件数
ステップ2:業務フローの整理とシステム導入の検討
次に書類の保存場所を決めます。クラウドサービスやオンプレミスのサーバーなど、組織の規模や運用方法に合致した方法を選びましょう。さらにデータ保存においては、タイムスタンプの付与や検索機能、データ改ざん防止の機能が求められます。業務フロー見直しを行い、法対応が不十分となる見込みであれば、適したシステムの導入も検討します。
ステップ3:社内マニュアルを整備し、周知徹底する
業務フローやシステム上の整備が終わったら、マニュアルを整備して社内で周知、徹底します。マニュアルには保存対象書類や管理手順、責任者の明確化など、実務に基づいた詳細な内容を盛り込む必要があります。
電子帳簿保存法対応で得られる3つの大きなメリット
電子帳簿保存法対応によって得られるメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
業務効率アップとコスト削減
電子帳簿保存法では、税務調査の迅速な実施のためにデータの検索性が要件として定められていますが、通常の経理処理においても業務効率化につながるでしょう。紙ではなく電子データの方式で保存することになるため、データを検索しやすくなり、業務の効率アップが見込めます。自宅や他拠点、営業先からも経理処理が可能で、この点も業務効率化になります。また、紙で保管する場合は、保管場所の確保・維持や書類が劣化・紛失していないかのチェックなどが必要になりますが、経理システムを利用すればそれらの作業は必要ありません。書類棚などオフィス什器の購入・廃棄も不要となり、コスト削減につながります。
税制上の優遇措置も
青色申告をする場合には、電子帳簿保存法への対応により青色申告特別控除を受けられます。また、帳簿のうち「優良な電子帳簿」の条件を満たすものについては、あらかじめ届け出を提出しておくことで、後に過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減されます。
SDGsにも貢献できる環境に優しい取り組み
そもそも電子帳簿保存法は、ペーパーレス化を狙いのひとつとしています。電子帳簿保存法に対応して電子データで保存するようにすれば、紙資源を削減でき、SDGsのひとつである脱炭素化にもつながります。SDGsの推進はコンプライアンスの観点からも重要とされています。ペーパーレス化を進めることで、企業としても良い印象を持ってもらえるようになる可能性もあります。
対応を怠るとどうなる?電子帳簿保存法違反のリスク
ここまで、電子帳簿保存法で定められている要件や、具体的な対応方法などについてご紹介してきました。では、電子帳簿保存法への対応を怠ってしまうと、どのようなリスクがあるのでしょうか。
電子帳簿保存法に違反している場合には、追徴課税や青色申告承認の取り消し、推計課税、会社法による過料の可能性があります。それぞれのリスクについて、詳しく確認していきましょう。
追徴課税・推計課税
電子帳簿保存法違反となれば、追徴課税や推計課税が課される可能性があります。スキャナ保存や電子取引に対して仮装・隠ぺいがあった場合には追徴課税として、10%の重加算税が課されます。
※重加算税…申告が適切でない場合に課される「加算税」の一種で、最も重いペナルティ
また、帳簿・書類の不備や、税務調査に非協力的であることにより実際の課税額が導き出せない場合には、所得金額を推計して課税額を決定する「推計課税」が課される可能性があります。
青色申告承認の取り消し
青色申告を行っている事業主が電子帳簿保存法違反となる行為をした場合には、青色申告承認を取り消されてしまう可能性があります。青色申告の取り消しを受けると、下記のような青色申告のメリットが受けられなくなります。
- ・最大65万円の所得控除
- ・青色事業専従者となる家族の給料を経費にできる
- ・事業の純損失を3年間にわたって繰越しまたは繰戻しができる
これらのメリットが受けられなくなると、経営にも影響が出るおそれがあります。なお、取り消しには違反の程度や修正申告の内容などを勘案のうえで決定されるため、必ずしも取り消しになるわけではありません。
会社法による過料
法人の場合には、会社法違反ともなりえます。会社法第976条では、正当な理由がないにもかかわらず書類や電子データに不正があった場合には、100万円以下の過料に処するとしています。会社法違反という事実だけでもコンプライアンス意識の低い会社と見られてしまう可能性があるため注意が必要です。
電子帳簿保存法に関するよくある質問
最後に、電子帳簿保存法に関するよくある質問に対して回答していきます。
Q.個人事業主も義務化対象?
A.個人事業主も、電子取引を行っている場合には義務化対象です。
Q.電子取引を行っていない場合でも対応が必要?
A.電子取引を行っていない場合は、義務化の対象外です。ただし、将来的な取引のために、デジタル化が推奨されています。
Q.スキャナ保存と電子取引データ保存、何がどう違う?
A.スキャナ保存は紙の書類をデータ化する仕組みです。対して電子取引のデータ保存は初めから、電子データで相手方と取引を行っているものが対象となります。紙の書類といっても、相手からPDFファイル形式で受け取ったデータをプリントアウトして保管している場合には、スキャナ保存の対象ではなく電子取引となります。
まとめ
電子帳簿保存法の基礎知識について、ご紹介しました。法改正により、2024年からは電子取引における電子データの保存が義務化され、基本的に電子取引を行っているすべての事業者に対応が求められるようになりました。対応を怠ってしまうと、追徴課税や青色申告承認の取り消しなど、さまざまなリスクがあります。電子帳簿保存法について正しく理解したうえで適切に対応しましょう。
電子帳簿保存法に対応するためには、専用のシステムの導入がおすすめです。電子データにタイムスタンプを付与するサービスを導入すれば、データの正当性を証明できます。タイムスタンプとは、電子データに付与することで、そのデータがその付与されたタイミングで存在し、それ以降変更されていないことを証明できる技術です。タイムスタンプを付与することで、「データが改ざんされていないこと」を証明できるのです。
DocuTrackerはクラウドストレージにアップロードしたファイルに対し、自動でタイムスタンプを付与できるサービスです。高度なブロックチェーンの技術を活用しており、ブロックチェーンに記録されたデータを改ざんしようとすると、前後のデータの不整合が起こる仕組みとなっています。
※ブロックチェーン……暗号技術を用いて分散的に処理・記録する技術。DocuTrackerはプライベートブロックチェーン「mijin」を利用しています。
DocuTrackerを利用できるクラウドストレージサービスは、Google ドライブやMicrosoft OneDrive、Dropbox、Boxです。これらのクラウドストレージに普段から電子データを保存している場合には、既存の業務フローを大きく変更することなく導入できます。タイムスタンプやその他電子帳簿保存法についてお悩みの場合は下記からお問い合わせください。
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