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ウォーターマークってなに?
仕組みやMicrosoft Officeでの入れ方を紹介


近年では、多くの企業が頭を悩ませている著作権侵害の問題。コンテンツを不正に改ざんされることを防ぐ方法はいくつかありますが、今回は、ウォーターマークについてご紹介します。透かしの技術は昔から印刷物に対して使われてきましたが、近年ではデジタルコンテンツに対するウォーターマークの付与も一般的になってきています。この記事ではウォーターマークの仕組みや、Microsoft Officeを利用する際の簡単な透かしの入れ方をご紹介します。


ウォーターマークとは?

ウォーターマーク(英語:electronic watermarkingもしくはdigital watermarking)は、いわゆる「透かし」のことで、近年では文書ファイルや画像、動画などのデジタルコンテンツに埋め込む文字や画像のことをウォーターマークと読んでいます。ウォーターマークには、見えるウォーターマークと通常見えないウォーターマークがあります。


見えるウォーターマーク

見えるウォーターマークは、たとえば作者名やコピーライト、ロゴなどを半透明の透かしとしてコンテンツに追加されるものです。実際に人の目で確認することができ、ストック画像素材やイラスト、プロカメラマンによる写真などに使われています。


見えないウォーターマーク(不可視なウォーターマーク)

見えないウォーターマークは、データ内に特殊な情報を埋め込む方法です。この種類のウォーターマークは通常の方法では見えませんが、専用アプリやアルゴリズムを用いると透かしを確認できます。見えないウォーターマークの例としては、画像ファイルに埋め込まれるメタデータなどが挙げられます。


ウォーターマークを入れる4つの目的


ウォーターマークの活用には、主に4つの目的があります。


コンテンツの著作権保護と不正利用抑止

コンテンツに著作権者の名前などをウォーターマークとして入れることにより、著作権を明確にし、利用規約を超えた二次利用や転載といった不正利用を防ぐことが可能です。コンテンツに表示されるウォーターマークは、不正利用をしている人にとってはけん制の意味があります。コンテンツを不正に利用しようとしてファイルのコピーやスクリーンショットをとる際には、ウォーターマークもコピーされるため、不正利用が明確になるのです。また「サンプル」「無断利用禁止」「複製」などのウォーターマークを入れて、ドキュメントの利用許諾や利用範囲をわかりやすくするという使い方もあります。

近年では、生成AIにより作成された画像にウォーターマークを入れて、AIによって作成された画像であることを証明するという取り組みも行われています。


ブランディング

ブランド名やサービス名、作者名をウォーターマークとして入れると、それらの認知度を高められます。絵画やイラストなどで、サインやはんこを押すのと同じと考えるとわかりやすいでしょう。ウォーターマークを入れておけば、コンテンツがSNSでシェアされたりメディアで紹介されたりしたときには、ブランドやサービス、作者名を同時に広められます。


情報漏えい時の経路追跡

動的なウォーターマークを用いて、情報漏えい時に経路を追跡することも可能です。動画を流出させた人を特定するのに使われる「フォレンジック・ウォーターマーク」が最たる例です。Microsoft Officeにおいても、Word、Excel、PowerPointに新たな動的ウォーターマーク機能が追加される予定となっています。(※2024年9月時点ではパブリックプレビュー)


改ざんの抑制・けん制

ウォーターマークは原本であることを証明するとともに、改ざんの抑制にもなります。ウォーターマークが入れられているファイルを変更すると、ウォーターマークも改ざんにより変化します。「ファイルを改ざんすると必ず発覚する」と認知させることで、不正利用者が改ざんを諦めることにつながるでしょう。


ウォーターマークの種類と利用用途


ウォーターマークはその目的によって、さまざまな種類と利用用途があります。ここでは、代表例を2つご紹介します


電子文書に使用する地紋透かし


電子文書には、地紋透かしというウォーターマークが使われます。地紋透かしは、電子文書の背面にドットパターンを入れる仕組みです。ドットパターンにはファイル名や作成者、作成日時などの情報が含まれていますが、人の目では内容が読み取れないようになっています。また電子透かしアプリ・サービスによっては透かしの表示をコントロールでき、文書の印刷時のみ透かしを表示したり電子データでやり取りする際にも表示したりすることが可能です。


ストック画像、動画コンテンツに使用されるロゴ

ストック画像や動画コンテンツには、文字のほかにサービスのロゴがウォーターマークとして使われることがあります。よくあるのが、ストック画像のサイトで、プレビュー画面ではサイトのロゴのウォーターマークが入り、購入すればウォーターマークなしの画像をダウンロードできる、というような使い方です。また、コンテンツをダウンロードすると、アプリのロゴと投稿者のIDが自動で付与される仕組みの動画アプリもあります。


Microsoft Officeでファイルにウォーターマークを入れる方法



ウォーターマークを入れるには、専用のアプリやツールを使います。簡易的なウォーターマークであれば、Microsoft Officeのそれぞれのソフトでも手動で入れることが可能です。Word、PowerPoint、Excelで透かしを入れる手順をご紹介します。


Microsoft Wordの場合

Wordは「透かし」機能を備えています。透かしの画像は既存の「社外秘」「複製を禁ず」のほか、「ユーザー設定の透かし」も作成可能です。


<既存の透かしを選択する場合>

  1. メニューから[デザイン] タブで [透かし] を選択します。
  2. 表示された画面で、ページ全体に設定したい場合は画像をクリックすると挿入されます。作業中のページにのみ挿入したい場合には、画像の上で右クリックしてメニューを表示し、「作業中の文書の位置に挿入」を選択します。

<ロゴなどの画像を選択する場合>

  1. メニューから[デザイン] タブで [透かし] を選択します。
  2. 表示された画面で、[ユーザー設定の透かし]を選択します。
  3. 「透かし」ダイアログで、[図] > [図の選択]に進みます。
  4. ファイル、Bingイメージ検索、OneDriveのいずれかから画像を選択すると、画像が背景に挿入されます。

Microsoft PowerPointの場合

PowerPointではWordのような「透かし」機能や既存の画像はありませんが、スライドマスターにテキストを配置することで透かしのように見せることが可能です。


<手順>

  1. [表示] > [スライド マスター] の順に選択します。
  2. 上部にある [スライド マスター] の画面を選択します。
  3. メニューから[挿入] > [テキスト ボックス] (縦書き、横書き)の順に選び、スライドのテキストボックスを配置します。
  4. テキストボックスに文字列を入力します。透かしがスライド本文の邪魔にならないよう、書式設定でフォントの色やテキストボックスの角度を調整します。
  5. 調整が終わったら、メニューの[スライド マスター] > [スライド マスターを閉じる]を選択し、元の画面に戻ります。
  6. Microsoft Excelの場合

    ExcelにもWordの透かし機能はありませんが、ヘッダーに図を挿入することで透かしにできます。


    <手順>

    1. メニューより、[挿入] > [ヘッダーとフッター] の順に選択します。
    2. 表示された画面でヘッダーのあたりをタップし、リボンの [ヘッダー/フッター要素] タブで [図] をクリックします。
    3. ファイル、Bingイメージ検索、OneDriveのいずれかから画像を選択すると、画像が背景に挿入されます。
    4. リボンの [ヘッダー/フッター要素] タブ内にある[図の書式設定]で、明るさやコントラストなど調整をします。
    5. データの改ざんを予防するには



      画像やテキストだけのシンプルなウォーターマークは、データ改ざんをけん制するために使える機能ですが、改ざんを防ぐ方法は他にもあります。特に効果的なのが、タイムスタンプの付与です。


      タイムスタンプとは

      タイムスタンプとは、付与された時間にそのデータが存在したこと、それ以降にそのデータが変更されていないことを証明する技術です。タイムスタンプが付与されると、そのデータが「改ざんされていないこと」を客観的に証明できます。


      DocuTrackerでタイムスタンプの付与が可能

      DocuTrackerは、クラウドストレージにアップロードしたファイルに自動でタイムスタンプを付与するサービスです。DocuTrackerではブロックチェーン(※)の技術を活用してタイムスタンプの生成を行っており、ファイルの信頼性を証明できます。ブロックチェーンに記録されたデータを改ざんしようとすると、前後のデータの不整合が起こることから、改ざんは極めて困難です。

      DocuTrackerの対象となるクラウドストレージサービスは、Google ドライブやMicrosoft OneDrive、Dropbox、Boxで、現在の情報システムを大きく変えずに利用することが可能です。


      電子書類・データが改ざんされていないことを証明し、保管履歴の証明が可能。DocuTracker、詳しくはこちら ≫

      ※ブロックチェーン……暗号技術を用いて分散的に処理・記録する技術。DocuTrackerはテックビューロ株式会社が開発・販売しているプライベートブロックチェーン「mijin」を利用しています。

      まとめ


      ウォーターマークは、コンテンツの改ざんを抑止するのに効果的です。不正利用や改ざんへのけん制、ブランディングを目的とする簡易的なウォーターマークであれば、Microsoft Officeなどでは既存の機能で実現できます。ウォーターマークだけでは改ざん防止策として心もとない場合には、タイムスタンプなどのサービスもあわせて活用していきましょう。